慢性疲労症候群の発症を原因から考える鍼灸治療
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原因不明の強い疲労感・痛み・精神症状

慢性疲労症候群と診断された23歳の女性。
少し不安げな様子で来院されました。

お薬をずっと飲み続けるのは不安です。
ハリで少しでも楽になりますか?
慢性疲労症候群の症状は、原因不明の強い疲労感・疼痛・精神症状 など多岐にわたります。
起き上がったり、動くことが出来なくなってしまう方もいるほどです。
理解されない苦しみ、社会からの隔離感

彼女も、耐えられない疲労感から、就いたばかりの仕事を辞めざるをえませんでした。
さらに伺えば、彼女の辛さは症状だけではなかったのです。

疲れたくらいで・・・

甘えてるだけ
などと、家族や周囲の人に病気を理解してもらえなかったこと。
それにより、気持ちにどうしようもない焦りが生じたことが一番苦しかった、と打ち明けられました。
さらに、仕事を辞められたことで、社会からどんどん離れていくような隔離感に陥り、精神的にもふさぎ込んでいるように見えました。
慢性疲労症候群について
慢性疲労と名前は似ていますが、異なる疾患ですので区別してとらえます。
名前のせいで誤解されやすく、周囲の理解不足から精神的に苦しまれる方も少なくありません。
概念

- 原因不明の 強い疲労が6ヶ月以上 続き、日常生活に支障をきたす疾患です。
- 治療法は確立されておらず、投薬治療による疲労感の軽減が行われます。
- 更年期障害、自律神経失調症、うつ病などと誤診されることも多く、長期間苦しまれる方も。
- 名前は似ていますが、原因が思い当たる 慢性疲労とは異なるもの です。
症状
半年以上続く微熱

解熱剤の効果があまりないという特徴があります (頭痛を伴うことも)。
強い疲労倦怠感

だるい、疲れやすい、昼寝をしないと体力がもたない
*疲労の原因が思い当たる場合は慢性疲労とし 慢性疲労症候群とは区別 します。
筋肉や関節の痛み・こわばり

腰・肩・腕・脚・背中に強い筋肉痛や関節痛
*動けないほどの激しい痛みが出ることも
浅眠・早朝覚醒

寝つきが悪い 眠りが浅い(慢性的な睡眠不足)
睡眠過剰

- 一旦眠ってしまうとなかなか起きられない
- 昼間の異常な眠気
うつ病に似た症状

- 気力の低下、意欲の消失
- 仕事や精神活動の妨げになることも
注意力の低下

- 注意力・集中力の散漫
- 物忘れ
- 記憶力の低下(最近のことが記憶できない)
喉の痛み

- 発症初期に多発(リンパ節の腫脹を伴うことも)
- 風邪の時のような喉の痛み、咳が止まらない、など
- 「治りにくい風邪」と勘違いして、発見が遅れることも
過敏性

- 明るさや寒暖に対して過敏に
- 化学物質や食物に対するアレルギーの悪化なども
多汗

- 気温に関わらず汗が止まらなくなる
- 寒気がするほどの寝汗(就寝中や起床時)
免疫力の低下が影響している!?
発症の原因は解明されていません。
あらゆる年代や職業に発症が確認されています。
発症の分類 (精神病理との関り)
Ⅰ類:精神疾患を全く伴わないもの
Ⅱ類:慢性疲労症候群の発症とほぼ同時に抑うつ状態が発症したもの
Ⅲ類:うつ病などの精神疾患の後に慢性疲労症候群が発症したもの

日本ではⅡ・Ⅲ類が多く、精神病理との関連も研究されています。
精神病理との関り
- 慢性疲労症候群を発症した人の 半数以上が抑うつ状態 に
- 自律神経失調症やうつ病の発症後に慢性疲労症候群を発症することも多い
慢性疲労症候群に伴う「抑うつ症状」は、一般のうつ病とは区別して「慢性疲労症候群の症状としてのうつ状態」と捉えます。
投薬治療と生活改善

- 投薬治療
ビタミンCやビタミンB12(免疫力の向上)
SSRI系の抗うつ薬や精神安定剤 - 早朝の朝日を浴びる
セロトニンの合成を促進します(抑うつや不眠の改善) - 軽度の運動
激しい運動だと意識が覚醒して不眠が悪化してしまいます - 禁煙
ビタミンの破壊を防ぎます
いかなる病の発症においても
背景にあるものは、現在の症状(発症)を抑えきれないレベルにまで弱められた 自然治癒力や精神活動の働き です。

人生や日常には、時として、心身にダメージを与えてしまうような出来事が生じます。
それにより、その方の バイタリティ(生命力の働き)が弱まれば、自然治癒力や精神活動といった 生体としての調整機能 もセーブされてしまうのです。
慢性疲労症候群に対するアプローチ
症状群の背景にあるものとは

慢性疲労症候群の症状には、
- 数か月以上も続く微熱や頭痛
- 強い疲労倦怠感
- 激しい筋肉痛や関節痛、こわばり
- 不眠、睡眠過剰
- 精神活動の低下、無気力、集中力の欠如、記憶力の低下
- 低血圧、胃腸の不調
- 明るさ・寒暖に過敏、多汗
- 喉の痛み(リンパ節の腫脹を伴うことも)
などがあります。
これらの症状群の背景には、

セーブされてしまった自然治癒力や精神活動の働き が考えられます。
鍼灸の臨床では
- 疲労感や不眠の解消
- 筋肉痛や関節痛の鎮痛
を目的とされ、来院される方も少なくありません。
絶え間なく続く症状群は原因不明とされ、明確な対処法も逃げ場もない苦しさです。
ですので

楽になった。軽くなった。
という、苦しさの軽減を実感していただくことが何より大切です。
加えて、原因不明とされる疾患には
- 外傷性の要因
*過去の怪我や転倒も
*痛みがなくなってもダメージは残ります - 扁桃(喉にある免疫器官)の弱まり
*発熱や倦怠感、筋肉や関節の痛み
*喉の痛み・違和感
が潜んでいるケースが多くみられます。
過去の外傷によっても、バイタリティ(生命力の働き)は弱められてしまいます。
扁桃の弱まりは、バイタリティ(生命力の働き)の弱まりのサインと捉えることができます。
慢性疲労症候群の改善と予防には

症状部位に対してだけでなく、それらの症状群の根元(発症の引き金)に対するアプローチが必要です。
当院では、全身(心)を対象とする、東洋的な考え方の鍼灸治療を行います。
弱められたバイタリティ(生命力の働き)を補うことで、本来の調整機能を取り戻していくのです。
ブログ文責 橋本昌周