産後うつの原因と症状(前兆サイン)

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マタニティ・ブルーと産後うつの違い

出産後に「何らかの精神的な変調」を経験する女性は少なくありません。

  • 妊娠の終了と女性ホルモンの急激な変化
  • 育児の始まり(環境の急変)
  • 出産による気力や体力の消耗

などにより、心と身体のバランスが不安定になると考えられています。

マタニティ・ブルーとは

出産後、数日~1週間以内に現れる、

  • 涙もろさ
  • 不安定な気分
  • 抑うつ
  • イライラ

などの情緒不安をいいます。

マタニティブルーは一過性で、自然に解消されていくことがほとんどです。

また、生活や育児への支障はほとんどありません。

産後うつとは

出産された女性の約1割が「産後うつ」を発症するという調査報告があります。

マタニティブルーが解消されずに、

  • 抑うつ(憂鬱な気持ち)
  • 過度の不安
  • 興味または喜びの喪失
  • 不眠
  • 気力の減退

などが2週間以上続くような場合は、「産後うつ」が懸念されます。

産後うつの症状(前兆サイン)をチェック

産後うつは、出産後2~3週間から3か月の間に発症しやすいとされ、特徴的な症状(前兆サイン)があります。

以下の項目をチェックしてみましょう(*産後うつを確定診断するものではありません)。

精神的な症状

  • 抑うつ(憂鬱な気持ち)
  • 気持ちが落ち込み、勝手に涙が出てくる
  • イライラして落ち着かない
  • 今まで出来ていたことが出来なくなった
  • 関心や興味の消失
    お洒落・趣味・娯楽に関心がなくなる
  • 些細なことで自分を責めてしまう
    「授乳が上手に出来ない自分はダメな母親だ」など
  • (子供は可愛いが)育児が苦痛に感じる
  • パートナーや家族に対しての怒り(自分の負担だけが大きいと感じる)
  • 集中力・意欲の低下

身体的な症状

  • 食欲不振
  • 体重減少
  • 寝つきの悪さ(早朝覚醒)
  • 頭痛や吐き気(市販の薬が効かない)
  • 胃がキリキリと痛む
  • 下痢または便秘が続く

発症の要因

産後うつは誰にでも起こり得る疾患で、必ずしも出産や育児そのものに原因があるわけではありません。

背景には、

  • うつ病の既往
    妊娠・出産前からうつ傾向があった
  • 妊娠中の抑うつや不安が悪化
  • 家族のサポート不足に対する不安焦り
    「すべて独りでこなさなければならない」
    「365日24時間休みなし(逃げ場なし)」と自分を追い込んでしまう
  • 妊娠・出産・育児に対する葛藤
    「突然母になってしまった」
    「子供が成人するまで続けなければならない」

などの要因が影響していたりします。

また、産後に起こりやすい「甲状腺や脳下垂体機能の異常」などより、産後うつに似た症状が引き起こされることもあります。

このような場合は、血液やホルモンの検査で原因が特定できる可能性があります。

産後うつへの対策

疲れ過ぎない育児、疲れたら休める育児

  • 家事や育児のシェアについて、あらかじめパートナーと相談して決めておく
    赤ちゃんの抱っこやおむつ替えなどをパートナーと共有しておくことで、いざという時にも安心して休める
  • ベビー・シッターや家事代行などの外部サービスを利用する

産後うつの対策

  • 夫への相談だけでは不十分
    実家の家族や友人など「信頼できる人」に話を聞いてもらう。
  • 焦らずゆったり(家事など後回しで良いのです)
    産後は今までのように出来なくて当たり前です。
  • 寝られる時には遠慮せず(睡眠は治療)
    無理に家事をせず、赤ちゃんと寝てあげる。
  • スマホや周囲からの育児情報は取捨選択する
    気にしすぎると不安になるばかりです。
はなのやま

地域の保健センターに産後うつの相談をすることもできます。

必要があれば、専門家のカウンセリングやクリニックを紹介してくれます。

少しでも「しんどい」と感じたら早めに利用しましょう。

現代医学的な治療

産後うつは、定義としてはうつ病の亜型と分類されています。

現代医学的な「うつ病の治療」は、主に薬物療法、精神療法、カウンセリング療法などが行われます。

現在では、母乳への成分移行や副作用の少ない精神薬なども開発され、母乳育児中でも薬物療法を行えるようになりました。

産後うつの克服と鍼灸治療

うつ病に鍼灸治療が効果的な理由

WHO(世界保健機構)が認めた鍼灸適応疾患の一つとして、うつ病の症状が挙げられています。

科学的な根拠としては

うつ病の患者さんの脳内では、

  • ノルアドレナリン
  • セロトニン
  • ドーパミン

などの、モノアミン神経伝達物質が減少していくことが確認されています。

はなのやま

抗うつ薬とは、これらの神経伝達物質が体内に吸収され無くなってしまうことを阻害することで、うつ症状の改善を行うものです。

一方で、鍼灸の刺激は、その方の脳内や体内の神経に働きかけ、

  • セロトニン
  • ドーパミン

などの神経伝達物質の産生を促進することが報告されています。

また、脳内α波の値を向上させますので、施術によるリラックス効果も期待できるのです。

産後うつの改善に鍼灸が選ばれる理由

Q.産後うつの改善のために鍼灸を選ばれた理由は?

当院で行ったアンケートによれば、

  • 安全だとは思うが(母乳への成分移行や副作用を考えると)精神薬の服用には不安がある
  • 症状が軽いうちに、生活習慣の改善や鍼灸などの代替治療で克服したい
  • 鍼灸による「リラックス効果」がストレスの解消になっている
  • クリニックでの治療と鍼灸治療(東洋医学)を併用して効果を高めたい

などの回答をいただきました。

東洋的な考え方の鍼灸治療は、症状や病名に対してだけでなく、全身(心)を対象にして行われます。

その方に本来備わっている「自然治癒力や精神活動の働き(ホメオスタシス)」を取り戻すことで、より根元的な改善と再発予防を目指すものです。

ガマンは百害あって一利なし

赤ちゃんは、お母さんの心情を敏感にキャッチするものです。

疲れたお母さん、不安なお母さん、イライラしたお母さん・・・

産後うつが、赤ちゃんの神経症(夜泣き・カンノムシ)の原因となり、それがさらに「産後うつ」を悪化させるといった悪循環になってしまうケースも少なくないのです。

また、ガマンを続けて症状が進行すれば、育児ができなくなったり、自分が消えてしまいといった衝動にかられてしまうこともあります。

うつ病は、早期の発見と改善によって、予後が大きく異なります(*本人に自覚がない場合には、周囲の人の発見が大事を小事にとどめます)。

まだ症状が軽いうちの、鍼灸治療による「心身のリラックス」「ぐっすり眠れる」といった産後うつへの対策(増悪予防)をおすすめしています。

ブログ文責 橋本昌周