認知症の在宅介護に疲れたら
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泥棒扱いされるお嫁さん
認知症のご家族の在宅介護をされている方が、疲労困憊な状態で来院されることがあります。
多くはお嫁さんです。
泥棒扱いされた
何十年いても嫁は他人だから
そのようなお話をよく伺います。
悔しくて、施術中に泣きだされる方もおられます。
頭にきて母親を叩いてしまった・・・
そのような方もいらっしゃいました。
因果律~認知症の記憶の行方~
私たちは 「因果律」という法則の中で生きています
後ろからボールをぶつけられたら、それが
「4次元空間から飛んできたかも?」
と思う人はいないでしょう。
誰かがいたずらしたに違いない。
後ろにいたアイツが怪しい!
このように、自分で解明できる範囲の中から原因(因果)を見つけ出そうとします。
これを因果律といいます。
ですが、認知症の方の記憶は失われています。
そして病識の無い方がほとんどです。
記憶を失くすのは、忘れるのとは違います
失くしてしまった記憶は、何かのきっかけで蘇ることはありません。
消去されたデータが復旧できないのと同じです。
自分が(お金を)しまい忘れたり、置き忘れたり、使ってしまったという、一連の記憶の全てが消去され存在しないのです。
記憶を失くした状態で、「あるはず」と思って開いた財布からお金が消えていたら・・・
先ほどの因果律から、
お金が勝手に歩いて消えるわけがない!
きっと誰かが盗んだのだ!
と思い込んでしまうかも知れません。
このような時、認知症の方が思い浮かべる人物は、おそらく「家族の誰か」ではないでしょうか?
連想処理~脳が行う記憶のミックス~
さらに、認知症の方の脳内ではキーワードの連想処理が行われます。
「家族の誰か=いつも傍にいるお嫁さん」の連想も多いでしょう。
連想は他の家族には及びません。
最初に思いついたお嫁さんが家族の代表です。
このような時、認知症の方の脳内では、
- 因果律による思い込み
- 連想処理による妄想
が同時に行われます。
まるで「お嫁さんが自分の財布からお金を盗んでいる瞬間を目撃した」かのような映像が作り出されてしまうのです。
一番信頼しているのは「お嫁さん」なのです
でも、家族というキーワードで一番最初に連想したお嫁さん。
実は、認知症の方が 誰よりも信頼している存在 なのです。
毎日頑張っても罵られているお嫁さんは、ぶつけようのない怒りを感じられることでしょう。
ですが本人の脳中では、このような連想処理が行われている可能性があるのです。
状況と症状が作りだす、認知症特有の幻覚 です。
365日続く疲労のスパイラル
介護疲れで来院された方には、肉体の疲労だけという方はおられませんでした。
- いつまで続くかわからない不安と憤り
- 365日OFFスイッチのない精神疲労
- 自分のアクティブな時期が消耗されていくジレンマ
慢性的な疲労やストレスが蓄積されれば、誰でも器量が小さくなりがちです。
今まで気にならなかった事にイライラしたり、疲れているのに眠れなくなったり、一つの思いにアタマが占領されてしまったり・・・。
気がつけば、 疲労の無限スパイラルから抜け出せなくなっていたりするのです。
心身の疲労を緩和~心の物置を増築する~
溜まった疲労やストレスを緩和し、温まり休まった状態になれば、少しずつ心身にも余裕が生まれてくるでしょう。
ストレスを入れておく 心の物置が増築されていく ような、そのようなイメージです。
まるでゲームのテトリスのように、次から次へと落ちてくるストレスのブロック。
そして、それはまだまだ続くのでしょう。
それでも、
心まで がんじがらめ にならないように
心身の余裕を取り戻していただけたら、と思う次第です。 応援しています。
ブログ文責 橋本昌周