痛風~尿酸値が下がらない原因~
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プリン体制限だけでは下がりにくい尿酸値
「食事もビールも気を付けてます。だけど全然(尿酸値が)良くならない。」と、痛風でお悩みの男性から、ご相談をいただきました。
お食事や細胞の新陳代謝により、絶えず体内で産生され続ける尿酸。
体内での産生量が多かったり、オシッコで上手に捨てきれなかった尿酸は血液中に取り込まれます。
尿酸は血中では代謝されません。
徐々に結晶化し、体内の関節や腱、多くは足の親指の付け根・足首・膝などに沈着します。
痛風とは、この結晶化した尿酸の沈着により、関節や腱に激痛が起こる病(やまい)です。
プリン体だけじゃない。尿酸が増える原因とは?
尿酸って、食べ物に含まれるプリン体が分解され、最終代謝産物として体内に蓄積されたものですよね?
そうです。でもそれだけでなく、尿酸は、細胞の新陳代謝などによっても、体内で絶えず合成される自然発生的な老廃物でもあるのです。
尿酸値を下げる為には、「ビールを我慢」「お肉や卵を我慢」というプリン体の食事制限が推奨されています。
ところが最近の研究により、飲食によるプリン体から作られる尿酸よりも、体内の代謝による尿酸の方が3~4倍多いということがわかってきました。
なるほど。プリン体の食事制限だけでは痛風(尿酸値)が改善しにくい、という方が多いのもうなずけます。
とはいえ、プリン体の摂り過ぎは尿酸過剰になりやすいので、「食生活に全く気を付けなくても良い」ということではありません。
尿酸を捨て切れないオシッコを考える
細胞の新陳代謝などにより、体内では毎日一定量の尿酸が作られます。
正常な状態では、産生された量と同じ量の尿酸が排泄され、尿酸量(値)を一定に保つようコントロールされています。
ですが、尿酸の量が増え過ぎたり、うまく排泄することができないと高尿酸血症(尿酸代謝異常)が起こりやすくなるのです。
欧米諸国に比べて、たんぱく質の摂取量が少ない日本人は、プリン体摂取による尿酸量よりも、尿酸の排泄が上手に行えない事による高尿酸血症が多いと考えられています。
つまり、尿酸を捨て切るような「良いオシッコができていない」ということです。
尿酸を上手に捨てきれない要因
内因(内に生じた弱まり)を考えてみることも大切です。
- 慢性疲労、精神ストレス、冷えの習慣
- 飲食睡眠の不摂生(過度の飲酒や睡眠不足など)
- 大病・ケガ・受けた治療・出産などによる消耗
- 不安、焦り、憤り、無力感など精神のアンバランス
- 老化や更年期の変調などの生理的な弱まり
東洋医学には、その方の精気(生命力・バイタリティ)の働きが弱められ、生体としての調整機能が低下していることを症状(発症)の要因とする考え方があります。
飲酒について ~尿酸と乳酸~
ビールのホップ(大麦麦芽)に含まれるプリン体を控えるために、「焼酎やウイスキーはOKだけどビールはガマン」という方もいらっしゃいます。
もちろん、プリン体カットは悪い事ではありません。
ですが、 体内のアルコールが代謝される時には尿酸と乳酸が生じます。
最近の研究では「乳酸は尿酸の排泄を妨げる物質」であることもわかっています。
なるほど。尿酸は、ビールだけでなく、アルコール全般の摂りすぎによって多く作られるということですね。
ですので、常飲されている方ほど乳酸の発生が多く、尿酸は排泄されにくくなってしまうのです。
お酒の種類ではなく、飲酒の習慣やトータルの摂取量を見直してほしいのです。
慢性疲労や精神ストレスによる代謝異常
蓄積された疲労、冷え、ストレスによる緊張状態(心身が休まらない状態)は、全身の血流を停滞させ、体を酸性に傾けてしまいます。
酸性に傾いた体には有害な活性酸素が発生しやすく、様々な機能や代謝の異常が起こりやすいのです。
東洋医学には、このような心身に生じた弱まりを、症状(発症)の要因とする考え方があります。
中性・アルカリ性の尿が尿酸を溶かします
尿酸は、酸性の尿には溶けにくい性質がある反面、中性・アルカリ性の尿には非常に溶けやすいという性質を持ちます。
尿酸値の高い方、疲労やストレスの強い方の尿は酸性に傾きがちです。
酸性の尿は痛風だけでなく、尿路結石も起こしやすくなります。
酸性の尿を中和する為には、野菜や海藻などのアルカリ性食物の摂取をお勧めします。
水分不足にも気を付けて
水分不足で血液が濃くなり、相対的に尿酸値が上昇してしまうことも考えられます。
水分の摂り過ぎは良くありませんが、必要量の水分摂取は排尿量を増やす効果もあり、尿酸値を下げるのに大切です。
痛風・尿酸値改善の鍼灸治療
1.痛み(症状)に対して
鍼灸院にいらした時点で「我慢できない激痛をどうにかしてほしい」という方が多いのです。
激痛期の方に対しては、痛みの緩和が最優先となります。
関節に痛みが発症した時点で、すでに陽経を超え陰経(脾経など)にまで影響が及んでおりますので、陽実陰実病症として陰経へのアプローチを取り入れます。
2.尿酸の代謝異常へのアプローチ
<先天的な代謝異常、他の病の合併症などを除けば>
様ざまな心身の過負荷により、精気(生命力)が弱められ、生体としての調整機能(尿酸を捨てきる力)に弱まりが生じている状態と捉えます。
全身(心)を対象とする鍼灸治療により、内因(その方の内に生じた弱まり)を補うことで、より根元からの尿酸代謝異常の改善と予防を目指します。
3.痛みが消えても終了ではありません
無痛期と激痛期の間隔は年々狭まってきますので、 尿酸に負けない元気なオシッコができる「心身共に温まった状態」までが道のりです。