【男性不妊の原因】特発性(原因不明の)造精機能障害の改善と鍼灸治療
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男性不妊の原因になる疾患
造精機能障害
造精機能障害は、
- 精子数の減少
- 精子濃度の低下
- 精子運動率の低下
- 精子の奇形
など、精子の質に劣化が生じることで不妊の原因になります。
男性不妊症の原因としては最も多く、
- 特発性造精機能障害(原因不明)
造精機能障害の60%以上に。 - 精索静脈瘤(身体的な原因のある造精機能障害)
造精機能障害の約30%に。
が主な要因となります。
性機能障害
性機能障害には「射精障害」と「勃起障害(ED)」があります。
射精障害
射精時にオーガズムはあるが精液が出ない(少ない)といった疾患です。
多くは「逆行性射精」で、射精時に交感神経の働きが失調し、前立腺と膀胱のつなぎ目が閉じきれずに、精液が膀胱内に逆流してしまいます。
原因には、
- 糖尿病の末梢神経障害
- 脊髄損傷
- 骨盤内の手術
- 薬剤の副作用
などが挙げられます。
勃起障害(ED)
男性不妊症の約20%は勃起障害(ED)に起因するものです。
- 器質性ED・・・加齢、生活習慣病、神経障害、男性ホルモン分泌の衰えなど、身体に原因があるもの。
- 機能性ED・・・不安やストレス、疲労の蓄積、精力の消耗、生殖エネルギーの停滞など、身体的な原因が特定できないもの。
- 混合性ED・・・器質性と機能性が混ざったもの。更年期障害のEDも含まれます。
に分類されます。
閉塞性無精子症
精巣で精子は作られているものの、精液の中に精子がみられない(非常に少ない)疾患です。
精路(精子の通り道)がふさがってしまうことにより起こります。
原因として多いのは、
- 性感染症などによる精巣上体炎
- 鼠径(そけい)ヘルニアの手術
- 先天性の精管欠損
などです。
男性不妊の原因で最も多い造精機能障害
原因となる主な疾患は、以下の通りです。
精索(せいさく)静脈瘤
精巣が精子をつくるには、体温より1~2度低いくらいが適温とされます。
左右の精巣からそれぞれ出る精巣静脈のうち、左側の静脈は血液が流れにくい作りになっています。
このため、左精巣静脈の中を血液が逆流して滞り「精索静脈瘤」というコブができることがあります。
このコブによる血流停滞により精巣内の温度が上昇して造精機能が低下してしまうのです。
クラインフェルター症候群
性染色体の異常による疾患です。
通常、男性の性染色体はXとYの組み合わせ(XY)になりますが、X染色体が一つ多くなる疾患です(XXY)。
この疾患では、精巣が発達せず、男性ホルモン(テストステロン)の分泌も少ないため、多くは無精子症となります。
停留精巣
胎児の時の精巣は腎臓の近くにあり、徐々に下降し陰嚢の中に入り込みます(精巣下降)。
この「精巣下降」が途中で止まってしまい、陰嚢の中に精巣がない状態をいいます。
生後6か月くらいまでは、自然に戻る可能性があるとされます。
他にも、
- 服用している薬の副作用による「薬剤性」の造精機能障害
- 脳のホルモン分泌異常による「低ゴナドトロピン性性腺機能低下症」
などがあります。
特発性(原因不明の)造精機能障害
造精機能障害の約60%を占めます。
考えられる要因には、
- 加齢
- 過労や精神ストレス
- 運動不足(生活習慣病)
- 喫煙
などが挙げられます。
鍼灸治療による改善が期待できるのは、この「原因の特定できない造精機能障害」です。
詳しくは以下にまとめていきます。
特発性(原因不明の)造精機能障害
男性不妊症の原因では最も多くみられます。
原因が特定できないために治療法がなく、そのせいで悩まれてしまう男性も少なくありません。
関連が疑われる要因
- 環境ホルモンの影響
身近にある薬品、建材、食品添加物などには 環境ホルモン(内分泌かく乱化学物質)が含まれていることがあります。
環境ホルモンによる影響として、精液の質の低下が危惧されています。
*動物実験での考察で、人体への影響については確実な証拠は示されていません。
- 電磁波の影響
直接触れるスマホやPCなどの電磁波による人体への影響も懸念され、研究が進められています。 - 加齢によるもの
最近の研究により、30代半ばを過ぎると、精子の濃度や運動率が徐々に低下してくることがわかってきました。
加齢による血流障害やホルモン分泌機能の衰えは、精子の形成を悪化させる要因になりやすいのです。 - 酸化ストレス(疲労物質・活性酸素)
過労・ストレス・飲食睡眠の不摂生・喫煙により、体内に疲労物質や蓄積され、活性酸素が大量に発生します。
それにより、身体が酸性に傾くと、様々な代謝や分泌機能が低下し、精子の形成にも悪影響を与えます。
生活習慣の改善から
酸化ストレスに負けない身体、質の良い精子を作れる身体を目指しましょう。
良質な睡眠
睡眠不足は、
- 自律神経の働きの乱れ(男性ホルモン分泌機能の低下)
- 疲労物質の蓄積・活性酸素の大量発生による酸化ストレス
を起こしやすく、精子の形成にも悪影響を与えます。
喫煙を控える
タバコに含まれる一酸化窒素は、体内に活性酸素を大量に発生させます。
それにより身体は酸性に傾き、代謝や分泌機能の低下により、精子の形成に悪影響を与えます。
また、陰茎の血中一酸化窒素は「勃起状態を抑制する物質」を産生し、EDの要因にもなります。
運動不足の解消
運動不足や生活習慣病(肥満)は、様々な代謝や血流を阻害し、身体を酸性に傾かせ、造精機能の弱まりにつながります。
適度な運動は、質の良い睡眠(自律神経の働きを改善)やストレスの解消の効果にも期待できます。
*長時間の自転車こぎは、精巣への物理的な血流障害が生じやすいので注意が必要です。
食生活
お食事は毎日のことですので、気をつけている方とそうでない方では、身体への影響は大きく違ってきます。
- 抗酸化作用の高い食品
ビタミンE・C(緑黄色野菜や果物)
不飽和脂肪酸(青魚や植物油などに多く含まれるDHA・EPAなどのオメガ3脂肪酸) - 酸化を中和してくれるアルカリ性食品
海藻や野菜 - 造精機能を高めてくれる食品
亜鉛が多く含まれるもの(牡蠣・牛肉赤身・ラム肉・豚レバー・するめ・うなぎ蒲焼・豚ロース肉)
を意識して摂られると良いでしょう。
ストレスを溜め込まない
ストレスによる過負荷は、自律神経の働きを乱し、男性ホルモンの分泌機能を低下させ、精子の形成に悪影響を与えます。
また、慢性的なストレスは、精子の形成だけでなく、性交回数の減少や性機能障害(ED)による不妊の要因にも。
ストレスを溜め込まない、リラックスできる生活習慣を心がけましょう。
お酒はほどほどに
体内でアルコールを分解するときに作られる 乳酸(疲労物質)は、蓄積されると身体を酸性に傾けます。
アルコールの常飲・多飲により生じる「多量の乳酸」は、精子の形成にも悪影響を与えかねません。
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特発性造精機能障害の鍼灸治療
東洋医学的には、身体が 腎陽虚(命門火衰)の状態になってしまった時に起こる症状の一つと捉えることができます。
- 腎(じん)とは、生命力や生殖に深く関わる器官です。
- 陽虚(ようきょ)とは、身体から温かさや活動エネルギーが失われ、冷えて動きが悪い状態です。
- 命門火衰(めいもんかすい)とは、生命力の働き(生殖エネルギー)の弱まりを意味します。
腎陽虚(命門火衰)の症状
- 腰や下半身の冷え、重だるさ
- 不眠
- 風邪をひきやすい
- 体力が落ちて歯が浮いたような感じがする
- めまい・耳鳴り
- 健忘(物忘れ)
- 勃起しなくなる(陽萎)
- 精液が薄い
- 精液が温かくない(=冷えて精子の動きが悪い)
などの、造精機能障害やEDの原因となりやすい症状が多くみられます。
腎陽虚(命門火衰)の原因には
- 先天的な要因(虚弱体質・低体重児)
- 過度な性欲や手淫による精力の消耗
- 過労・精神ストレス・冷え
- 加齢(生命力の弱まり)
- 慢性消耗性疾患
- 慢性的な不安・恐怖、ショックな出来事
など、腎精(生命力・生殖に関わるエネルギー)の不足や消耗が原因となります。
鍼灸治療によるアプローチ
全身(心)の弱まりを補う鍼灸治療
生命力の働き(生殖エネルギー)を弱めてしまう要因には、
- 先天的な要因
虚弱体質(先天的な精力不足) - 後天的な要因
過労、冷え、飲食睡眠の不摂生、大病による消耗 - 外傷性の要因
交通事故・ケガ・外科手術などによるダメージ - 心因的な要因
精神ストレス、不安・焦り・憤り・無力感といった心の問題 - 生理的な要因
加齢による衰え、更年期に伴う心身の変調
などが考えられます。
東洋的な考え方の鍼灸治療は、症状部位や病名に対してだけでなく、全身(心)の状態を対象にして行われます。
その方のバイタリティ(生命力の働き)の弱まりを補い、より根元的な改善を目指します。
効果を高めるための補助治療
腎陽虚(命門火衰)の度合いが強い場合には、
- 下腹部にある下半身の力をつけるツボ
- 腰にある「腎」に関わるツボ
- 足首にある「腎」に関わるツボ
に補助的な治療を加えます。
下半身の冷えや重だるさが解消したり、脚が温まり軽く感じられる変化を改善の指標の一つと捉えます。
また、近年では、慢性疲労・精神ストレス・心の問題などから起こる「機能性の男性不妊症」は増加傾向にあります。
お仕事や家庭の環境、人間関係による消耗など、自身のことだけで精いっぱいで、次世代(精子)の為のエネルギーを残しておく「心身の余力」がないのです。
鍼灸による「蓄積された疲労の解消」や「ストレスの緩和によるリラックス効果」は、自律神経系やホルモン系の働きに良い影響を与えます。
ぜひ、改善の為の一助として試されてみてはいかがでしょうか?
ブログ文責 橋本昌周